日本の就労ビザの種類について
「技術・人文知識・国際業務」ビザについて
「特定技能」ビザについて
「技能実習」ビザについて
転職者を雇用する場合の注意事項について
日本の就労ビザは20種類近くありますが、外交官、医者、法律家、研究者、大学教授などの高度な専門職を除くと、留学生や日本に初めて働きに来る外国人を雇用する場合に検討すべき選択肢は多くの場合、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」という3つのビザが中心となります。そこでここでは、これらメジャーな3種類のビザについてご説明してゆきたいと思います。
下記はそれぞれの特徴を比較した表です。
ビザの名称 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定技能 | 技能実習 |
従事できる 仕事 |
高度な 専門的職務 |
現場作業やサービス | 現場作業やサービス |
立 場 | 労働者 | 労働者 | 実習生 |
人材の条件 | ・国内外の大学 または ・国内専門学校 卒業者 |
・技能実習修了者 または ・職種別の試験合格者 +日本語試験N4以上 |
実習に関連する前職 |
就労期間 | 上限なし | 通算5年(2号は上限なし) | 原則3年(最大5年) |
受入人数 | 制限なし | 制限なし (建設は常勤職員数と同数) |
制限あり |
転 職 | 可 | 可 | 不可 |
特別な制限 | なし | なし | 技能実習計画の履行 |
契約団体 | なし | 登録支援機関(任意) | 監理団体(強制) |
特別の義務 | なし | ・必要な役職の設置 ・各種支援義務の履行 ・入管へ各種報告届出 (登録支援機関に委託可) |
・必要な役職の設置 ・技能実習計画の策定 ・実習状況の報告 ・監査の受入れ |
以下、それぞれのビザについて詳解してゆきます。
概要
外国人が日本で働くために従前からある就労ビザで、一定以上の高度な学識や技能をもっている外国人材に認められるビザです。技能実習生や特定技能外国人との区別でエンジニアや高度人材などとも呼ばれています。
メリット
外国人を受け入れる制度上の構造がシンプルであり、ビザを取得してしまえば日本人とほぼ同様に働いてもらうことができます。具体的には、企業と外国人労働者との間で雇用契約を交わし、ビザを取得すれば、ビザを更新し続ける限りいつまでも従業員として働いてもらうことができます。外国人労働者側としても、将来的に永住許可を目指すことができるほか、本国の家族を呼ぶことができるなどのメリットがあります。
デメリット
技術・人文知識・国際業務の問題点、それは、学士(大学・短大)や専門士(専門学校)などの学位をもった学識者を想定しているなど、従事させることができる仕事の内容が比較的高度なものに限定されており、基本的に職種の範囲が狭いということです。たとえば、溶接という仕事も、専門的・技術的な職種だといえますが、それは大学や専門学校で学んだ学識が不可欠となるような仕事とは評価されないため、余程の事情がない限りは「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動には該当しないという扱いになってしまいます。
これらは入管法や申請実務の経験的・専門的な部分でもありますので、「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得をご検討の皆さまは、ぜひ当事務所までご相談ください。
なお、このビザは外見上1つのビザとして存在していますが、仕事の内容によって、「技術」、「人文知識」、「国際業務」の3つのカテゴリーに分けられており、それぞれ取得のための条件が異なります。そのため、ビザを取得できるかどうかはカテゴリーごとに検討する必要があります。
カテゴリー | 仕事の内容 |
技 術 | 設計やプログミングなど、理系の仕事 |
人文知識 | 総合職やマーケティングなど、文系の仕事 |
国際業務 | 翻訳・通訳・語学の指導(英会話講師)などの語学を活かした仕事や 海外取引など、外国人特有の思考や感受性を必要とする仕事 |
以下、各カテゴリー毎に解説をします。
@ 仕事の内容 | 理学・工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務であり、かつ、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であること。 |
A 申請人の経歴 | 大学(短期大学を含む)又は日本の専門学校を卒業していること。 または、10年以上の実務経験があること。 |
B 関連性 | 仕事の内容と、学校で勉強した科目(または実務経験)に関連性があること。 |
【解 説】
@仕事の内容について
簡単にいえば、大学や専門学校などで学んだ学術的な知識を必要とするような仕事でなければいけないという要件です。例えば、専用のCADソフトを使って図面を描く仕事や、コンピューター言語を使ってプログラムを作るような仕事は、工学の知識を必要とする一定水準以上の業務と認められ得ます。
どの仕事ならば@の条件を満たすかどうかは一概には判断が難しいところですが、的確な判断には個別具体的な事情と入管法の知識に加えて申請経験の蓄積が必要となります。また、入国管理局の判断も時々の運用で変化し得ますので、詳しくはぜひ当事務所までご相談ください。
A申請人の経歴について
大学、短期大学、専門学校を卒業していること、または10年以上の実務経験のいずれかが必要となります。大学と短期大学は海外の学校でも大丈夫ですが、専門学校については日本の専門学校に限られることには注意が必要です。また、海外の短期大学は名称に「大学」とついていても、実際には職業訓練学校のような学校もあり、その場合は海外の専門学校という扱いとなってしまうためにビザの取得ができません。海外の学校が大学といえるかどうかは学位の有無で判断されますので、学歴をチェックする際には、大学や短期大学なら「学士」や「準学士」、日本の専門学校ならば「専門士」の学位を取得しているかどうかを確認してください。
また、10年以上の実務経験は、在職証明書を提出することで証明しますが、虚偽の在職証明書も多いために審査が厳しく、在職証明書だけでは不許可になるケースもあります。実務経験でビザ申請する場合には、在職していたことや仕事の内容について出来る限りの資料を揃える必要があります。
B関連性について
仕事の内容と申請人の経歴についての関連性、つまり@とAに関係があることが必要です。例えば、プログラマーの仕事であれば、学校でプログラミングの科目を履修していること、CADの仕事ならばCADソフトの使い方や図面作成の科目を学校で履修していることが求められます。この関連性は、大学であればより緩やかに、専門学校ではより厳しく審査されます。
10年以上の実務経験で申請をする場合は、その実務経験との関連性が審査されることになります。
@ 仕事の内容 | 法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務であり、かつ、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であること。 |
A 申請人の経歴 | 大学(短期大学を含む)又は日本の専門学校を卒業していること。 または、10年以上の実務経験があること。 |
B 関連性 | 仕事の内容と、学校で勉強した科目(または実務経験)に関連性があること。 |
【解 説】
「技術」との違いは、@の仕事の内容のうち「理学・工学その他の自然科学の分野」の部分が「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野」に置き換わっただけです。
具体的に認められる業務としては、総合職やマーケティングなどが考えられます。
@ 仕事の内容 | 翻訳、通訳、語学の指導(英会話講師など)、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務であり、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務。 |
A 申請人の経歴 | 実務経験3年以上(学歴関係なし) 翻訳・通訳・語学の指導については、大学を卒業している場合に実務経験不要。 |
B 関連性 | 仕事の内容と、実務経験に関連性があること。 なお、大学を卒業して翻訳・通訳・語学の指導をする場合には、履修科目や母国語などから仕事が出来るかどうかを判断される。 |
【解 説】
@仕事の内容について
重要なのは、「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」ということです。
母国語を活かした翻訳・通訳・語学の指導や国際取引業務などは解りやすいと思いますが、例えば「服飾」の仕事だからといって、日本の漫画キャラクターのプリントTシャツを作るような仕事は、「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする」とは言えませんので、対象になりません。この場合、民族衣装などが典型的ですが、外国特有の文化的なセンスを何らかの形で活かした服飾である必要があります。広報や室内装飾のデザイン、商品開発についても同様です。
A申請人の経歴について
3年以上の実務経験が必要となります。例外として、翻訳・通訳・語学の指導については3年の実務経験がなくとも、大学を卒業している場合には業務に従事することができます。
B関連性について
従事する仕事の内容と3年間の実務経験との間に関連性が必要です。大学の卒業をもって翻訳・通訳・語学の指導に従事しようとする場合には、仕事で用いる言語と日本語双方のレベルを証明しなくてはなりません。具体的には、大学での履修科目や授業で用いられる言語のほか、語学試験の成績、その言語を使って生活していた年月の長さなどがポイントになってきます。
概要
2019年4月1日より新しいビザである『特定技能』ビザが創設されました。この在留資格の特徴は、これまで「技術・人文知識・国際業務」では難しかった様々な業種・職種において外国人が働くことができることです。
この特定技能ビザを取得することで、例えば、飲食店でアルバイトをしていた留学生が卒業後にそのままホールや厨房スタッフとして就職することや、飲食料品製造工場での作業、ホテル・旅館などにおける各種オペレーションなどに従事することが出来ます。また、3年以上の技能実習を修了した技能実習生も本国に帰ることなく特定技能へとビザを変更し、労働者として就業することができます。
「特定技能」ビザの種類
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。特定技能2号へは、特定技能1号修了者が試験に合格することで移行することができます。
■特定技能1号 通算在留期間:5年(特定技能1号のビザをもって勤務できる通算の上限期間です) 家族の帯同:不可 支援義務:有=特定技能1号外国人に対する各種の支援義務があります。 なお、支援義務は登録支援機関(外部リンク)に委託可能です。 ■特定技能2号 通算在留期間:制限なし 家族の帯同:可 支援義務:無 |
「特定技能」ビザで働くことができる業種
下記の14種類の分野で働くことが可能です。
素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、造船・舶用工業、飲食料品製造業、
自動車整備、航空、建設、農業、漁業、ビルクリーニング、介護、外食、宿泊
「特定技能」ビザを取得する方法
試験合格ルートと技能実習修了ルートの2つがあります。
@ 試験合格ルート
→ 分野別の試験に合格(各分野ごとに国内または国外で実施されます)
+
日本語試験に合格(日本語能力試験4級(N4)又は国際交流基金基礎テストA2)
A 技能実習修了ルート
→ 関連作業について技能実習2号(3年間の実習)または技能実習3号(5年間の実習)を修了
国内で実施されている試験の合格率は概ね70%前後ですので、既に日本語の勉強をしている留学生の方は頑張り次第で合格できる試験であるといえます。技能実習修了者は試験を受けることなく、特定技能ビザへの変更が認められます。
なお、試験は国外でも実施されますので、海外で試験に合格した外国人も来日することができます。また、母国へ戻っている元・技能実習生も特定技能ビザで再び来日して働くことができます。
メリット
「技術・人文知識・国際業務」ビザでは認められないような職種で外国人雇用を実現することができます。ビザ取得の条件としても、該当する技能実習を修了するか評価試験に合格さえすれば、関連する高度な学歴や職歴などがなくても外国人を雇用できることも大きなメリットといえるでしょう。
また、バックグラウンドが全くないまま来日する技能実習に比べると、既に技能実習の経験や試験に合格している特定技能外国人は受入れ企業にとって即戦力になります。
デメリット
特定技能1号については通算5年間の滞在しか認められておらず、またその間は外国人の生活支援義務や入管への定期報告義務があります。また、外国人本人にとっても本国から家族を呼べないなどの制限があります。もっとも、各種義務は登録支援機関(外部リンク)に委託ができるほか、特定技能2号に移行した場合には、支援義務や在留期間の上限がなくなり、家族を呼ぶことも可能になります。転職可能な点も、技能実習との相違として留意が必要です。
家族について
上述のとおり特定技能1号の5年間は「家族滞在」ビザで家族を呼ぶことができませんが、短期滞在(いわゆる観光ビザ)で招へいすることはできます。この場合1回の滞在は90日間、年間180日まで家族を日本に滞在させることができます。
滞在期間について
特定技能1号は通算5年間日本で働くことができます。”通算”で5年ですので、例えば特定技能1号として2年間働いて2年間本国へ戻る、またビザを取得のうえ来日して3年間年間働く、とうこともできます。なお、ビザの再取得を伴わない短期の一時帰国はいつでも認められます。
概要
企業が国際貢献として実習生を受け入れ、3年または5年間の技能実習教育の後に母国へ帰国させ、海外に日本の技術を移転することが制度の目的ですが、事実上の就労ビザとなっています。
受入企業は、実習の目的を逸脱した労働をさせないよう受入企業を監理する「監理団体」という組織と契約を結び、監理団体を通して技能実習生を受け入れ、その監理を受けながら実習を実施します。
メリット
実習のためとはいえ、人手不足となっている職種で作業をしてくれる外国人を受け入れられることが最大の恩恵と言えます。技能実習生として日本に来るために学歴や試験合格などの条件がなく、採用する日本企業としては本人のやる気などを重視して採用することができるのもメリットかもしれません。
一定の職種については、3年または5年の技能実習を修了すれば特定技能へビザの変更ができるようになりましたので、技能実習修了後、本人が就職を希望すれば特定技能外国人材として新たに雇用を開始することができます。
デメリット
実習生を計画どおりに教育して技術を修得させるという目的から、予め認定を受けた「実習計画」に拘束されるほか、手続きがやや煩雑なものとなっています。組合への加入や監理団体との契約、事前に詳細な実習計画を作成してその認定許可を得ることなどを出発点に、計画に変更があればその都度許可や届出などが必要となります。また、設置すべき役職としても、講習が必要となる技能実習責任者に加え、事業所ごとに実習指導員、生活指導員を置くことが義務づけられています。その他、計画どおりに実習を実施していることを報告する日報や各種記録の作成、監理団体による毎月1回の訪問指導や外部監査にも対応する必要があります。
なお、1年に受け入れることができる人数の上限が決まっており、かつ実習期間が最大5年なので、最大受入人数の計算式は「1年間の上限人数×5年間」となります。(もっとも、職種によっては3年の技能実習修了後に「特定技能」へとビザを変更し、新たに5年間の雇用を開始することも可能です。)
安心して転職者を受け入れるための対策
例えば、「技術・人文知識・国際業務」ビザを既にもっている外国人を採用したとします。
採用したのは2019年5月、在留期限は2020年4月まで残っているとしましょう。
このような場合、就労ビザをもっていますし、在留期間も残っているので安心してしまいがちですが、実はそうはいきません。なぜなら、現在有している「技術・人文知識・国際業務」ビザは、前職での仕事について入管が判断したものですので、自社でも同じようにビザが維持できるかはまだ判らないからです。
このケースにおいて自社でもビザを維持できるかどうかは、2020年4月の在留期間の更新申請の際に入管が判断します。つまり、もしも自社でビザが取れない外国人を採用してしまっていた場合は、2020年4月の更新申請が不許可になって初めてそれが判るのです。これは結構恐ろしいことです。最悪の場合には雇用主も不法就労助長の罪に問われてしまう可能性すらありますし、外国人本人としても不許可になってから再就職先を見つけようと思っても在留期限がありません。
そこで、転職者がビザを維持できるかどうかについて早めの対策が重要となってきます。
転職者の採用をお考えの皆様には下記の2つの対策をお勧めします。
@ 行政書士に判断してもらう
→ 就労ビザ取得のプロである行政書士に相談することによって、転職先でもビザが更新できるかどうかを判断することができます。転職前に相談した方が良いですが、転職後であっても出来るだけ早めに相談するようにしてください。
A 「就労資格証明書交付申請」を行なう
→ これは現在の勤務先でビザを更新できるかどうかを更新前に入管が判断し、大丈夫なら証明書を発行してくれるものです。ビザの更新時期が来た時もこの証明書があると2週間ほどで許可がでるのでスムーズですし、何より転職先で安心して勤務することができます。ただし、この申請を行なうことが出来るのは転職者を雇用してから3ヶ月までになります。審査も1〜2ヶ月ほどかけて行なう厳しい審査ですので、申請は専門の当事務所に是非お任せください。
その他入管への手続
外国人本人は、出入国在留管理局に「契約機関に関する届出」を提出する必要があります。
離職した会社、新しく就職した会社は、それぞれ「中長期在留者の受入れに関する届出」を
提出します。
TEL. 022-343-6025
FAX. 022-343-6026
Mail. info@sendai-visa.com
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